始まりの翼
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始まりの翼

夏水蒼
色んな音を一斉に拾ってしまう耳を持つため疲れやすく、社会の善悪の決めつけに疑念を抱き生きてきた子ども。 幼い頃から大事に育ててくれた大好きだった家族が亡くなった。 そこに訪れる町の人々を、まるで家族のように親身に話を聞いている姿をすぐ隣で見てきた。 時代が変わって行くごとに、文化摩擦が増え争いが耐えなくなり、不安や孤独を感じ、時空の中に閉じこもっていた。 そんなある日、医者と軍人が尋ねて来た。 「全てを見て知っておいて、何も知らないふりをして、そんなとこに篭ってたんじゃ。覚悟がない上に罪じゃろ。」 医者は着ていた白衣を被せた。 「貴方の罪を読む覚悟はあるか?」 軍人は赤黒い鍵を差し出していた。 「貴方が見届けたその物語の続きを自分で紡いで来てくれんかね?貴方が見た物語は貴方しか知らんけど、わしらにとっては重要な情報なんだ。」 知らない人はたどり着けない地下にある図書館。 そこは、貴方にとっては生まれた頃からの庭のような場所。 もちろん、行き方も知ってるはず。 そこにある本が、色んな人々が作り出した景色を貴方に見せてくれる。 どんな人でもそれぞれ違った信念や悩みを持っているものだ。 怯える必要は無い。 あの時貴方はもっと色々な人の話を聞いて、それを受け入れてきたんだろ。 それぞれの物語が合流していく様は、傍で見てきた貴方が、今は一番知っているはずだ。 それぞれの物語が重なり合った先の、その後の世界を見届けてやって欲しい。

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