ある悪魔の物語 Scene9
いつも背中を反るポーズが多いので、たまには丸めるポーズにしてみました。
Scene 9:鳥籠の刻印
「ん……そこ。しっかり刻印のとこも丁寧に拭き取ってよね」
聖女としてのお仕事を前に、水浴びを終えたアヴァマナは膝を抱えて丸まり、銀髪を持ち上げて大烙印をさらけ出す。
湿った肌に濡れタオルが滑る感触を愉しみつつも、その眼光は冷ややかに虚空を捉えていた。
「……ねえゴミムシ。君、いま『魔力が戻ったのに、なんで逃げないんだろう』って……すっごくつまらない期待をしたでしょ」
ふいに首だけを横に向け、ジト目でこちらの目奥を覗き込んでくる。
その瞳には、こちらの思考をすべて見透かしているような、底知れない嘲笑が浮かんでいた。
「あは、顔に出すぎ。 逃げないんじゃなくて『出られない』のさ。この背中のダサい刻印のせいでさ、街の外に出ようとすると焼けるみたいに疼いて引き戻されるんだよね。……ふふ、何その落胆した顔。ボクが自由になれなくて安心した? それとも同情でもした?」
不機嫌そうに唇を鳴らし、わざとらしく溜息をついて見せる。だが次の瞬間、くるりと向き直ると、冷たい毒指でこちらの顎をくいと持ち上げた。
「……ふふっ、ま、ボクはこれでも『充分すぎるくらい』楽しんでるからいいんだけどね♪」
至近距離で合わさる視線。その奥にあるのは、人間の認知の歪みを愛でる悪意だ。
「上層部のお偉いさんはボクを最高の『金づる』だと思って高笑いしてさぁ。君たち看守はいつ毒に狂うか怯えながら『危険な淫魔』として腫れ物扱い。……で、治してもらった愚かな患者たちだけが『奇跡の聖女様』なんて拝んでる」
毒手で看守の頬をちっちっと撫で、鈴の鳴るような声で笑う。
「誰も本当のボクなんて見てない。……全員、ボクの手のひらで踊らされてるだけ。ねえ、こんなに愉快な特等席、逃げるなんて勿体なさすぎるでしょ……♡」
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