(19年8月19日追記)
ハーネス周りを少しだけ修正
――島の東部にあり、約15万人が暮らすこの蒸気都市において、蒸気力飛行コミューターを個人所有する人間は一種の特権階級であると同時に、〝バカの集まり〟と見なされている。
上方向に発達した建築群を移動する際に、建物の隙間を飛ぶことができるコミューターは非常に便利だが、エネルギー源となる飛行石は非常に高価で、日常使用などしようものなら、一般労働者の給与の7割が消えてしまう。また、建物の側面にはあちこちに蒸気の排出パイプが備えられ、建物の近くを飛ぶ際は、常に高温の蒸気にさらされる危険性を伴う。万が一、高所から墜落した場合の危険性は言うまでもない。
結果として、蒸気力飛行コミューターは「趣味とロマンの世界」とされ、一部の人間が余暇を使って飛ぶにとどまっている。アンもその一人で、遺跡から見つかる古代文書を翻訳する仕事で得た収入の多くを飛行石代に費やし、月に一度の「飛行日」を楽しみに日々を生きている。